2018年6月20日水曜日

No.1 図書館って何だろう 図書館の発見 福岡県の西端 玄界灘に面した、糸島市二丈から 

 どんなに海の幸、山の幸、里の幸に恵まれた自然豊かな町であっても
 いい図書館がないとプラマイゼロですね。

 2007年の春、滋賀県の図書館を定年退職して福岡市の西側に隣接した前原市で住み始めた私はその1年後、ご縁というほかない出会いを授かって前原市のさらに西側、福岡県の西端の町、二丈町で住み始めた。

西隣りは佐賀県唐津市で玄海灘に面した人口1万3千人の二丈町は「図書館のない町」だった。退職後どこに住むかを考えたとき、ぼんやりと「図書館のない町」にという思いがあったものの、ほんとうにこのような場を授かることができたのは、一つ一つの出会いが連なって不思議としか思えない出来事だった。

二丈町に住み始めて程なく、龍国寺の甘蔗(かんしゃ)和成、珠恵子住職ご夫妻に紹介されたのが当時、町会議員をされていた波多江一正さんだ。民間の企業を定年退職後は自宅の傍に炭小屋を建て、炭を焼きながら悠々自適のくらしをするお考えであった。

ところが波多江さんが住む小さな集落の人たちが耕す田んぼの多くが、町が強く進める工場誘致のため町に買い上げられるという事態が起こり、お寺や自宅の周辺の美しい田畑が失われる事態に直面し、このことに心痛の思いを深くしたご住職のご家族や思いを同じくする町民の方たちは、どうしてこのようなことが起きたのかを知るため町議会を傍聴し、議場での地域の当事者である住民の思いとはかけ離れた論議や議事の進め方に唖然とされる。

それでは、この人をという町会議員をたてなければ。こうして白羽の矢が立ったのが地域の人からの人望の厚い波多江さんだった。

波多江さんは民間での仕事をしていた時も、兼業で農業を営み山の幸にも海の幸にも詳しい方だ。子どもの時から生まれ育った二丈の町で、家の手伝いをしながら、また子どもどうし遊びながらたくさんの深い知恵を身につけられたのだと思われる。また子どもたちに剣道を教える強い体力と意志の人でもある。

波多江さんから伝わってくるのは地域、郷土、二丈という町への深い思いだ。だから、工場誘致の問題やその後に起こった山の上に残土処分場建設の問題の時に、本気で立ち向かわれたのだと思う。

「二丈町は海の幸、山の幸、里の幸に恵まれたいい所でしょう」

家人が二丈町に移り住んで間もなく、知り合いもまだ少ないだろうと気にかけて家人にかけてくださった波多江さんの問いかけに返って来たのは、

「どんなに海の幸、山の幸、里の幸に恵まれた自然豊かな所でも、いい図書館がないとプラマイゼロですね」

波多江さんにとっては衝撃の言葉だった。自分が心から誇りとするこの二丈、糸島の豊かな自然に、図書館は匹敵するというのか。

それから程なくのことだった。波多江さんの所に遊びに来た孫を連れて伊万里市民図書館に行ったら、孫が「図書館から帰らんって言うっちゃが」、波多江さんにとっての「図書館の発見」

その「図書館の発見」がどれほど深いものであったかは、2008年(平成20年)3月議会から2013年(平成25年)12月議会まで、定例議会で毎回、年4回、合計20数回、図書館の一般質問をした活動に現れているように思う。(2014年の選挙には立候補せず。)

(2010年1月 前原市、志摩町、二丈町の1市2町が合併して人口約10万人の糸島市と
なる。波多江さんの一般質問は、二丈町議会及び合併後の糸島市議会でのもの)

「命育む、水と緑と図書館をの波多江です」から始まる波多江さんの一般質問が聞かれなくなって久しい。

地域のどこに住んでいても、だれでも、求める資料をなんでも利用できる図書館の在りようを考える場を始め、波多江さんから手渡されたバトンを手に歩きだそうと考えています。図書館の一陣の風を。