2019年7月31日水曜日

No.32「銀の滴降る降るまわりに」(本を選ぶ393号)




本を選ぶ393号



No.31 「澤田正春さんから手渡されたもの」 (本を選ぶ392号)





本を選ぶ392号 「澤田正春さんから手渡されたもの」
 2018年(平成30年)1月20日



No.30 「自然農との出会い・・・図書館に導かれて」(本を選ぶ391号)

No.30に続き、「本を選ぶ」に投稿したものです。不思議な縁しで自然農と出会い、今年で13回目となる米作り、一苗ずつ手植えしての田植えが終わったのは7月4日、日の光と山からの水と土の力で一日一日よく育っています。



本を選ぶ391号 「自然農との出会い・・・図書館に導かれて」
  2017年(平成29年)12月20日





2019年6月30日日曜日

No.29 『本を選ぶ』に投稿「いつでも、どこでも、だれにでも、なんでも」,夏葉社のことなど

埼玉県蕨市にある株式会ライブラリー・アド・サービスが毎月、発行している『本を選ぶ』に原稿の依頼があり、一昨年2017年の11月号から5回にわたって投稿した。ブログ
での公開の了解をいただいたので、以下に掲載し、関連することについて書いていきます。   
 
 ・本を選ぶ390号 


同社の創業は1985年3月、"本を選ぶ"は創業時から発行されている。34年の歩みだ。公立図書館約2,050館、大学図書館約1,000館に配布されている。最新のバックナンバーは
http://www.las2005.com  で読むことができる。

1985年といえば、私が図書館としては3館目となる、博多駅近くの財団法人の232㎡の小さな図書室で働き始めて6年目のことだ。

(千葉県八千代市立図書館1972.4~1974.3、福岡市民図書館1976.7~1979.3〈嘱託〉、財団法人博多駅地区区画整理記念会館1979.4~1988.11、福岡県苅田町立図書館1988.12~1995.3:滋賀県能登川町立図書館・博物館1995.4~2006.1〈合併により東近江市立能登川図書館・博物館~2007.3)

 "本を選ぶ"というのは、図書館の仕事の中でももっとも大切なことであるが、1980年台の半ばからそれを誌名に掲げ、幅広く”本を選ぶ”に関わる紙面を作り続けてきた同社の先駆性と息の長い継続性を思う。出版社や教員、図書館員(現職・元)、図書館友の会など、広い分野の本に関わる人たちが執筆している。図書館開設に当たった図書館員のレポートもあったりして、各地の図書館づくりの状況を知らせるものでもあった。

私にとっての第1回目は、"いつでも、どこでも、だれでも、なんでも"とした。何回書くことになるかわからなかったが、今私にとって最も切実な課題で、2回目以降は、〈だれでも〉〈どこでも〉は今、どうなっているか。〈なんでも〉はどうなっているかを順次書いていければとぼんやりと思っていた。実際には最初の原稿を送信したあと、編者の尾山さんとのやりとりから違う内容になったしまったのだが、私にとっては、今これからとりかかることを、改めて明確に意識する機会となった。

また、"いつでも、どこでも、だれでも、なんでも"を夏葉社発行の『小さなユリと』(黒田三郎)から書き始めているように、東京、吉祥寺の古本屋で手にした復刻版の『小さなユリと』から広がった世界は思いもよらないものだった。その間の経緯については、"図書館の風"No.24 (犬も歩けば)で記しているが、夏葉社に関わる箇所を以下に再録します。


夏葉社のこと        

4つの出版社のうち、夏葉社だけは、私が図書館を退職した2年後の2009年から始められた出版社で、私は夏葉社と言う出版社が新しく始められたことを全く知らずにいた。2014(平成26)年だったか、東京に出かける機会があり、用件を終えてたまたま入った吉祥寺の古本屋で、1冊の本と出会った。子どもが描いたと思われる表紙の絵(父親を描いたのだろうか)が目にとまり、思わず手にしたのだが、それが黒田三郎の『小さなユリと』(1960 昭森社版 復刻)であることに驚き、早速買い求めた。本の代金を支払う時、若い店主と思われる女性が「その本を出版した夏葉社さんは近くにありますよ」と教えてくれた。

『詩集 小さなユリと』黒田三郎 1960 昭森社版・復刻/夏葉社 2015.5
私にとっては初めて聞く出版社の名前だった。その日は時間がなくそのまま帰ってきたのだが、その時他日、夏葉社を訪ねることになろうとは思ってもみないことだった。
東京から帰ってきてから程なく、夏葉社を始めた島田純一郎さんの初めての本、『あしたから出版社』(晶文社、2014:”就職しないで生きるには”21)を手にし、一気に読み終えた。

2008年4月、小さい子どもの時から親しくしてきた、半年しか違わない従兄が事故のため急死する。悲しみのなかにいる「叔父と叔母のためになにができるか。心当たりは一つだけあるのだった。」それは従兄が亡くなったばかりのころ、定職のない31歳の著者が「読んでいた本の中でであった一篇の詩だった。」
「ぼくは、あの一篇の詩を、本にして、それを叔父と叔母にプレゼントしようと思った。そのことを手がかりに未来を切り開いていきたいと思った。」
出版の経験などまるでなかった。

届けたいのは、「作者は聞いたこともない100年前のイギリスの神学者、子どもを失った父親が、異国の地でこの詩に偶然出会い、そして、自分自身のために訳していた」ものだった。

問題は
「詩は42行、A4の紙一枚におさまる」という分量、その短さだった。「それをわざわざ一冊の本に仕立てたいというのは、本という「物」に対する愛着ゆえだった。」
どうする、この短い行数の詩で、ほんとうに一冊の本ができるのか。

著者が敬愛する宮崎駿監督の言葉が頭に浮かぶ。「求めているものが見つからないときは「半径3メートル」のなかで探すのがいい。」「ぼくはその言葉が好きだった。」
読者である私も、”なるほどそうか、そうだとぼくも思う”と深く共感しながら、著者の後を追う。少しどきどきしながら。

さらに著者は小説を書くときに恩師が教えてくれた言葉を思いだす。
「いいアイディアがなにも思いつかないときは、自分がこれまでかかわってきたもの、夢中になっていたものを思いだすことのほうがいい、それ以外のものは、たいてい付け焼刃にしかならない。」

こうして著者は部屋の中、著者から3メートル以内の中から一冊の本を見つける。『ノーラ12歳の秋』。そこにイラストを描いていた高橋和枝さんのものを見て、この人だと思う。もちろん、高橋さんと面識があるわけではない。
それから「詩とイラストが響き合う」一冊の本が生まれいづるまでのことは、実際にこの本を手にしてほしい。

和田誠さんの本ををつくりたい。面識があるわけではない。手紙を書く。心こめて。2日間かけて。電話をする。
著者のあとを追う読者は、どきどきしながら一冊一冊の本の誕生に立ち会うことになる。一冊一冊がゼロからのスタートであることに驚きながら。

島田さん、そして夏葉社の本づくりは何よりまず手渡したい人に、その人のための本を出版すること。1万人、10万人のための本ではなく、具体的な1人のための本づくりから始まった。その思いの直截さ、その思いを一つ一つ形にしていく姿勢に驚かされる。そして、そこから出版され始めた一冊一冊の本のなんと面白いこと!心嬉しくなる、心はずむ新刊の一冊一冊を、風信子文庫の出前先で手にすることができる有り難さ!

『あしたから出版社』島田潤一郎 晶文社

2016年の夏、夏葉社から『移動図書館ひまわり号』(前川恒雄)の復刻版が出版されると知って驚いた。この本が絶版になっていることを知らなかった。1988年4月に筑摩書房から出版された時、すぐに買い求め、折りに触れ何度も読んできた本だ。1965年に1台の移動図書館ひまわり号で日野市立図書館を始め、7つの分館をつくり、それから中央館を建てて、全域サービスを実現するとともに、日本で初めてリクエスト・サービスを実施して、以後の日本の公立図書館の道を切りひらいた活動を生き生きと伝える実践の書だ。

『移動図書館ひまわり号』/左側:夏葉社・復刊本、帯の背に「図書館革命の記録」
右側:筑摩書房 1988年


『2001年 われらの図書館 ―ーすべての福岡市民が図書館を身近なものとするために――』
(福岡の図書館を考える会 1988年1月24日)冊子のタイトルは、前川恒雄氏の『われらの図書館』
(筑摩書房・1987)を念頭に、新しい世紀を迎える2001年には、市民が願う図書日づくりの歩みが
始まっていますようにとの思いをこめて決めた。前川さんの著書からは、深い元気を手渡され続けてきた。

〈1987年に福岡市で活動を始めた”福岡の図書館を考える会”のチラシ〉T・Y作成

日本の図書館がどのように作られてきたか、図書館員の多くが今、アタリマエのこととして行っている図書館サービスの仕事が、どのようにして始められたか。
「いつでも どこでも だれでも なんでも」のスローガンを掲げ、その実現に力をつくしてきた図書館を創りだし、生み出してきたものは何か。リクエストや全域サービスはどのように始められたか。
図書館はだれのためのものか、何をするところか。「地域に図書館があるとはどういうことか」、私にとって何より切実な問いに応えてくれる数少ない本のうちの一冊だ。

この復刊本を買うのは夏葉社でとの思いが浮かんでいた。8月に東京に出かける所用があり、その時にと考えた。2016年8月23日、夏空のもと、目白から吉祥寺に向かい、吉祥寺の図書館に立ち寄ってから、11時頃夏葉社を訪ねた。

事前に何の連絡もせず、いきなりの訪問だった。夏葉社に着いたら不在、あきらめて帰ろうとしている所に島田潤一郎さんがやってこられた。室内に招き入れられ、1時間半近く話しこむ。島田さんの貴重な時間をいただいてしまった。静かで清楚な室内の一角には書棚があり、夏葉社から生まれる本の源泉かとも思われた。新しいいのちが生まれる何か修道院の工房にいるような静かな時間を授かった。

辞する時に、『移動図書館ひまわり号』を買い求めようとしたら、「京都の誠光社とともに、一番、注目されている、Title」を紹介してくださり、本屋への行き方を教えてくださった。2015年11月、京都、河原町丸太町に開店した誠光社のことでは、同店を始めた堀部篤史さんが、それ以前に店長として働いていた、恵文社一乗寺店には、私が滋賀の図書館にいた時、寺町二条にある3月書房と共によく通っていた。恵文社の棚の前に立っては、一冊一冊その品揃えに感心しきりだった。いつ行っても自分の図書館にはない、「あれもない、これもない」面白そうな本があって、眼を見開かされる書棚だった。誠光社には福岡から京都に出かける際に、何度か立ち寄り、書棚の本の魅力はもとより、お店のレジ前の小さな壁面をつかっての展示の内容の面白さ、すさまじさに驚かされた。

島田さんに教えていただいた荻窪、八丁交差点の近くにある本屋Tittleを訪ねることができたのは、思いもよらぬプレゼントを授かった思いがした。誠光社とはちがう、しかし一冊一冊が呼びかけてくる本がどの棚にもあった。ああ、こんな本屋さんが近くにあるといいなとの思い。
【福岡市内には、キューブリックという心弾む本屋があるが(警固、箱崎)、自宅からは車で30~40分、箱崎店は都市高速を使っての時間。箱崎店では、2回のパンづくりをしているスペースで面白い企画を次々にやっていて、5月10日の夜7時からは若松英輔さんの講演があり、なんとか駆けつける事ができた。】

Titleを訪ねた日には2階のギャラリーでは、何も行われていなかったが、本屋にギャラリーという場があると、そこがその地域での新たなこの上ない出会いの場となると思われ、店の(活動)の広がりが感じられた。どんな場が生まれていくか楽しみだ。
【そのことを早くも知らせてくれたのが、店主の辻山良雄さんとnakabanさんの新著
『言葉の生まれる景色』(ナナロク社)だ。Title の2階ギャラリーで始まった同書の「原画展」が、現在、全国で巡回展示中だとのこと。『365日のほん』(辻山良雄、河出書
房新社)とともに面白く読んだ。】残念だったのは、時間がなくて、1階の奥にあるカフェに行けなかったことだ。




驚きはまだ続いた。滋賀の友人から一枚のチラシが送られてきた。
『 のバトンをつなぐ 前川恒雄「移動図書館ひまわり号」復刊記念のつどい』
2016年9月2日(金)PM2時~5時
◆第1部 『移動図書館ひまわり号』でつなう対談
     前川恒雄さん(元滋賀県立図書館長)✕ 島田潤一郎さん(夏葉社代表)
◆第2部 島田さんを囲んで、フリートーク
・会場 草津市立市民交流プラザ大会議室
・主催 滋賀の図書館を考える会

滋賀の友人から送られてきたチラシ
これはもう、行くしかない。博多駅前から京都行きの夜行バスで駈けつけることになった。うれしい時間と懐かしい出会いを授かった。

「志のバトンをつなぐ」2016.9.2
前川恒雄『移動図書館ひまわり号』復刊記念のつどい※記録・滋賀の図書館を考える会
『点』第10号‥2016.12.25 滋賀の図書館を考える会・編集発行
夏葉社の本では、どの本もその装丁に驚くのだが、昨年出版された『庄野潤三の本 山の家の本』は、まずその装丁が美しい。書店の店頭で、「山の上の家」というタイトルと表紙の静かな書斎の佇まいの写真に惹かれて思わず手にした本が夏葉社のほんだった。手にしてうれしくなる本だ。



ページをめくり、庄野潤三を初めて読む人へのこの上ない本となっていること、その編集の力に眼を見張った。巻頭の佐伯一麦さんの寄稿に続き、選びぬかれた庄野潤三の五つの随筆、短編なのですぐに読める。それに「子どもたちが綴る父のこと」(長男、長女のエッセイ)、「庄野潤三を読む」では岡崎武志さんのエッセイ。

「全著作案内」では、宇田智子、北条一浩、島田純一郎、上坪祐介の各氏の文章、宇田さんは沖縄の那覇の牧志の市場の向かいで、ウララという小さな古本屋をしている人だ。何年か前、福岡市内の欅通りで、毎年秋に開かれている「ブックオカ」のイベントに来られていたとき、お話を聞き、路上の一箱古本市のお店で本を買ったことがある。島田さんが、この人だと選んだ人だと思われるが、島田さんを含めて4人で書かれているのが面白い。その他に、「単行本未収録作品」。

山の上の家の写真がとてもいい。山の上の家での、ときの気配が伝わってくるようだ。この本の大きさがいい。手にすることがうれしい判型の扉を開くと、山の上の家で時間をかけて育まれた豊かなものが、立ち現れてくる。
                   【以上、「図書館の風」No.24より】 
 夏葉社 natsuhasya.com

夏葉社;ホームページより
”夏葉社は1万人、10万人の読者のためにではなく、具体的なひとりの読者のために、本を作っていきたいと考えています。マーケティングとかではなく。まだ見ぬ読者とかでもなく。いま生活をしている、都市の、海辺の、山間の、ひとりの読者が何度も読み返してくれるような本を作り続けていくことが、小社の目的です。”







2019年6月21日金曜日

No.28 ”うみかえる” みんなのマルシェ  「みりんづくり」ワークショップのお知らせ

今日、6月21日(金)は月に1度の ”みんなのマルシェ”の定例日ですが、14時から、
「みりんづくり」のワークショップがあります。またとない機会です。関心のある方、ぜひご参加を!前々回は、”ミツバチ”(養蜂)について、とても有益なお話がありました。
”うみかえる”のワークショップに目が離せません。

今日の”うみかえる”の出店の様子です。

ようこそ ”うみかえる”みんなのマルシェへ

開店準備中です








自然農のお店




      2階へ
開店準備


 卵はいかがですか








             本の出前 (風信子文庫)






2019年6月6日木曜日

No.27 ”上野英信の坑口”展、緊急のお知らせ 東京・東中野 ポレポレ座で

会期が残り少なくなりましたが、5月22(水)~6月9日(日)まで、中野区東中野のSpace&Cafeポレポレ坐で、「筑豊、南米、沖縄・・・人々のいのちの火を掘りおこした記録文学作家」上野英信さんの生涯とその仕事を紹介する展示が開催されています。



ポレポレタイムス社のお知らせによると、『(2017年に開催された福岡市文学館企画展「上野英信 闇の声をきざむ」の協力を得て実現となった本展では、氏の著作物を中心に、筑豊文庫「宣言文」や取材メモ、初期の同人誌など、貴重な資料を展示。

また「筑豊文庫」から始まった記録者たちも合わせてご紹介します。会期中には上野朱さん(古書店主・上野英信氏子息)、鎌田慧さん(るぽらいたー)、三木健さん(ジャーナリスト)をゲストにお迎えしてトークイベントや関連映画の上映も予定しています。 
 ぜひお誘い合わせの上おでかけください。』とあります。





 「図書館の風No.23」で福岡市文学館の”上野英信 闇のこえをきざむ」展の紹介をしましたときに、日本のどこかの図書館で、福岡市文学館の協力を得て、「上野英信展」を企画し開催する図書館がでてきてほしいと書きましたが、このたびのポレポレ坐での展示と関連イベントは、翔けていければと思うばかりの素晴しい内容です。駆けつけることができる方はぜひ、お出かけを!

ポレポレ座 https://www.facebook.com/pole2za/ 

JR総武線 東中野駅 西口より 徒歩1分
都営地下鉄大江戸線 東中野駅 A1出口より 徒歩1分
営団地下鉄 東西線 落合駅より 徒歩10分
〒164‑0003
東京都中野区東中野4‑4‑1 ポレポレ坐ビル1F
メールアドレス:polepoleza@co.email.ne.jp
TEL:03-3227-1445
FAX:03-3362-0083
ポレポレ東中野 上映スケジュール
https://eiga.com/theater/13/130612/9007/

2019年5月31日金曜日

No.26 犬も歩けば(3)”うみかえる”へ  風信子(ヒアシンス)文庫から3つ目の出前

風信子(ヒアシンス)文庫への3つめの出前の注文をされたのは、”うみかえる”の松浦里絵さん。歩くとうれしい遠浅の美しい白砂の海岸が700メートル渡って広がる糸島市深江の海辺にある地区100年の古民家が”うみかえる”(コミュニティスタジオ)だ。



ペルーから帰って間もない松浦さん



アフリカから

風信子文庫(出前)






          
JR筑肥線、筑前深江駅から歩いて10分ちょっと。深江海水浴場入口すぐの2階だての古民家。松浦さんに初めてお会いしたのは、2014年4月から翌年の1月まで8回にわたって開かれた二丈(図書館)利用者懇談会の1回目の懇談会だっただろうか。
2010年(平成22)年1月に前原市、二丈町、志摩町の1市2町が合併して糸島市となり、それまで公立図書館がなかった二丈、志摩地区の旧庁舎(二丈は、3階建て建物の2階に図書館の開架室や事務室、3階の一角に2部屋の図書館会議室と子育て支援センター、1階は市民窓口等の支所;志摩は旧町役場を支所とし、その隣りにあった第二庁舎を志摩館。)を改装して、この地区ではじめての図書館が開館したのが、合併翌年の2011年(平成23年)10月のことだった。

その際、二丈、志摩の旧庁舎の1階に設けられていた支所を、市の方針で5年後には廃止し、支所廃止後に、支所があった1階に図書館を移転するということで、新しく開館した二丈館、志摩館はそれまでの暫定図書館と呼ばれた。”としょかんのたね・二丈”の会では、暫定図書館としてつくると、図書館にとって大切な書架や机、椅子などの図書館家具の制作や配置を含めて、暫定の図書館とすることで想定される問題を指摘して、2011年の最初の時から、1階に図書館と利用が多いと考えられる市民窓口を設置し、都市計画課や農業委員会等を2階に配置すれば、5年後に支所を廃止して都市計画課等を本庁に引きあげる際に、図書館は大部分を大きな変更なく移行できる旨、意見や要望をだしてきたが、
市の考えは変わらず、結果として私たちが危惧していた暫定図書館とすることの問題が現実のこととなってしまった。(二丈図書館には、小さな子どもたちの背丈にあった絵本の表紙をみせておく絵本架は置かれなかった、等々)

”暫定”図書館とは、何という言い方だろう。ともあれ、一旦、開館した2つの分館を5年後にどのような図書館にするかについての「利用者懇談会」が、先に述べた2014年(平成26)年4月から始まり、その会で松浦さんにお会いしたのだった。
 市外から、糸島市に移り住んで間もないと思われた松浦さんは、改築移転後の二丈館について、とくに図書館が地域の人たちの集いと出会いの場となることを願われて、いくつもの提案をされていた。喫茶の場をというのもその一つだった。私も滋賀県東近江蒲生図書館でボランティアの人たちによって行われている週1回の縁側カフェのことなど紹介し、松浦さんたちが自分たちがボランティアでやるからとも発言されたが結果的に応えられることはなかった。

松浦さんは懇談会の途中から、”糸島くらしと図書館”の会を始められ、以後、”としょかんのたね”の会と、市や教育委員会に対して、要望書や公開質問状づくりやその提出で行動をともにしてきている。

深江海水浴場の築100年の古民家を私が最初に訪ねたのは何年前のことだったろうか。映画界の誘いだった。会場は古民家の2階、そのスペースも、階段も、壁の一部が落ちかけていたかに見えた箇所も、彼女が時間をかけて修復、改装したものだ。何回かの映画階があってしばらくして、月に1回のマルシェを始めるという。ついては、本の出前をということだった。こうして、風信子文庫からマルシェのある日、一日だけの出前が始まった。

手作りのパンやおかし、自然農の野菜や果物、はちみつや、時にはピザ窯をのせた移動の車、建物の中だけではなく、外の空間でもさまざまなお店や、小さなイベントが行われている。マルシェのある日、以外でも、地域の内外からおおくの人が行きかっている。
「人、もの、アート。あらゆる交流の場に活用できます。」とは松浦さんのことば。
前回は、”ミツバチの話”があった。
 海まで30秒の ”うみかえる”へ ようこそ!








2019年4月30日火曜日

No.24 犬も歩けば(2)2月初めの嬉しいできごと   夏葉社・ナナロク社の本が ・・・


2月の初め、ノドカフェでのうれしい出来事

ノドカフェには、当初は月に1度、現在は2ヶ月に1回の周期で本の出前をしている。持っていく本はテーマのある時も、無いときもある。その時節折々の本、またブックカフェの坂本さんの希望がある時は、できるだけそれに応えてと考えている。

ノドカフェでの新刊本の販売

2月1日、本の入れ替えで訪ねた時、坂本さんから「こんど、本(新刊本)の販売を始めました。今は思潮社、ナナロク社、夏葉社、雷鳥社の本です。まだこれからも、直接出版社と交渉して増やしていきます。」とお聞きし驚いてしまった。この小さなスペースのブックカフェで新刊本を販売される(ソンナコトガ出来ルンダ!!)とは。しかも出版社の名前を聞いてびっくり、いずれも私にとって興味深い本を出版していて、図書館で働いていた時にも、各社の本には確実にその出版を待ち受けていたと思える読者がいて、図書館の蔵書を豊かにしてくれる出版社であったからだ。

夏葉社のこと        

4つの出版社のうち、夏葉社だけは、私が図書館を退職した2年後の2009年から始められた出版社で、私は夏葉社と言う出版社が新しく始められたことを全く知らずにいた。2014(平成26)年だったか、東京に出かける機会があり、用件を終えてたまたま入った吉祥寺の古本屋で、1冊の本と出会った。子どもが描いたと思われる表紙の絵(父親を描いたのだろうか)が目にとまり、思わず手にしたのだが、それが黒田三郎の『小さなユリと』(1960 昭森社版 復刻)であることに驚き、早速買い求めた。本の代金を支払う時、若い店主と思われる女性が「その本を出版した夏葉社さんは近くにありますよ」と教えてくれた。

『詩集 小さなユリと』黒田三郎 1960 昭森社版・復刻/夏葉社 2015.5
私にとっては初めて聞く出版社の名前だった。その日は時間がなくそのまま帰ってきたのだが、その時他日、夏葉社を訪ねることになろうとは思ってもみないことだった。
東京から帰ってきてから程なく、夏葉社を始めた島田純一郎さんの初めての本、『あしたから出版社』(晶文社、2014:”就職しないで生きるには”21)を手にし、一気に読み終えた。

2008年4月、小さい子どもの時から親しくしてきた、半年しか違わない従兄が事故のため急死する。悲しみのなかにいる「叔父と叔母のためになにができるか。心当たりは一つだけあるのだった。」それは従兄が亡くなったばかりのころ、定職のない31歳の著者が「読んでいた本の中でであった一篇の詩だった。」
「ぼくは、あの一篇の詩を、本にして、それを叔父と叔母にプレゼントしようと思った。そのことを手がかりに未来を切り開いていきたいと思った。」
出版の経験などまるでなかった。

届けたいのは、「作者は聞いたこともない100年前のイギリスの神学者、子どもを失った父親が、異国の地でこの詩に偶然出会い、そして、自分自身のために訳していた」ものだった。

問題は
「詩は42行、A4の紙一枚におさまる」という分量、その短さだった。「それをわざわざ一冊の本に仕立てたいというのは、本という「物」に対する愛着ゆえだった。」
どうする、この短い行数の詩で、ほんとうに一冊の本ができるのか。

著者が敬愛する宮崎駿監督の言葉が頭に浮かぶ。「求めているものが見つからないときは「半径3メートル」のなかで探すのがいい。」「ぼくはその言葉が好きだった。」
読者である私も、”なるほどそうか、そうだとぼくも思う”と深く共感しながら、著者の後を追う。少しどきどきしながら。

さらに著者は小説を書くときに恩師が教えてくれた言葉を思いだす。
「いいアイディアがなにも思いつかないときは、自分がこれまでかかわってきたもの、夢中になっていたものを思いだすことのほうがいい、それ以外のものは、たいてい付け焼刃にしかならない。」

こうして著者は部屋の中、著者から3メートル以内の中から一冊の本を見つける。『ノーラ12歳の秋』。そこにイラストを描いていた高橋和枝さんのものを見て、この人だと思う。もちろん、高橋さんと面識があるわけではない。
それから「詩とイラストが響き合う」一冊の本が生まれいづるまでのことは、実際にこの本を手にしてほしい。

和田誠さんの本ををつくりたい。面識があるわけではない。手紙を書く。心こめて。2日間かけて。電話をする。
著者のあとを追う読者は、どきどきしながら一冊一冊の本の誕生に立ち会うことになる。一冊一冊がゼロからのスタートであることに驚きながら。

島田さん、そして夏葉社の本づくりは何よりまず手渡したい人に、その人のための本を出版すること。1万人、10万人のための本ではなく、具体的な1人のための本づくりから始まった。その思いの直截さ、その思いを一つ一つ形にしていく姿勢に驚かされる。そして、そこから出版され始めた一冊一冊の本のなんと面白いこと!心嬉しくなる、心はずむ新刊の一冊一冊を、風信子文庫の出前先で手にすることができる有り難さ!

『あしたから出版社』島田潤一郎 晶文社

2016年の夏、夏葉社から『移動図書館ひまわり号』(前川恒雄)の復刻版が出版されると知って驚いた。この本が絶版になっていることを知らなかった。1988年4月に筑摩書房から出版された時、すぐに買い求め、折りに触れ何度も読んできた本だ。1965年に1台の移動図書館ひまわり号で日野市立図書館を始め、7つの分館をつくり、それから中央館を建てて、全域サービスを実現するとともに、日本で初めてリクエスト・サービスを実施して、以後の日本の公立図書館の道を切りひらいた活動を生き生きと伝える実践の書だ。

『移動図書館ひまわり号』/左側:夏葉社・復刊本、帯の背に「図書館革命の記録」
右側:筑摩書房 1988年


『2001年 われらの図書館 ―ーすべての福岡市民が図書館を身近なものとするために――』
(福岡の図書館を考える会 1988年1月24日)冊子のタイトルは、前川恒雄氏の『われらの図書館』
(筑摩書房・1987)を念頭に、新しい世紀を迎える2001年には、市民が願う図書日づくりの歩みが
始まっていますようにとの思いをこめて決めた。前川さんの著書からは、深い元気を手渡され続けてきた。

〈1987年に福岡市で活動を始めた”福岡の図書館を考える会”のチラシ〉T・Y作成

日本の図書館がどのように作られてきたか、図書館員の多くが今、アタリマエのこととして行っている図書館サービスの仕事が、どのようにして始められたか。
「いつでも どこでも だれでも なんでも」のスローガンを掲げ、その実現に力をつくしてきた図書館を創りだし、生み出してきたものは何か。リクエストや全域サービスはどのように始められたか。
図書館はだれのためのものか、何をするところか。「地域に図書館があるとはどういうことか」、私にとって何より切実な問いに応えてくれる数少ない本のうちの一冊だ。

この復刊本を買うのは夏葉社でとの思いが浮かんでいた。8月に東京に出かける所用があり、その時にと考えた。2016年8月23日、夏空のもと、目白から吉祥寺に向かい、吉祥寺の図書館に立ち寄ってから、11時頃夏葉社を訪ねた。

事前に何の連絡もせず、いきなりの訪問だった。夏葉社に着いたら不在、あきらめて帰ろうとしている所に島田潤一郎さんがやってこられた。室内に招き入れられ、1時間半近く話しこむ。島田さんの貴重な時間をいただいてしまった。静かで清楚な室内の一角には書棚があり、夏葉社から生まれる本の源泉かとも思われた。新しいいのちが生まれる何か修道院の工房にいるような静かな時間を授かった。

辞する時に、『移動図書館ひまわり号』を買い求めようとしたら、「京都の誠光社とともに、一番、注目されている、Title」を紹介してくださり、本屋への行き方を教えてくださった。2015年11月、京都、河原町丸太町に開店した誠光社のことでは、同店を始めた堀部篤史さんが、それ以前に店長として働いていた、恵文社一乗寺店には、私が滋賀の図書館にいた時、寺町二条にある3月書房と共によく通っていた。恵文社の棚の前に立っては、一冊一冊その品揃えに感心しきりだった。いつ行っても自分の図書館にはない、「あれもない、これもない」面白そうな本があって、眼を見開かされる書棚だった。誠光社には福岡から京都に出かける際に、何度か立ち寄り、書棚の本の魅力はもとより、お店のレジ前の小さな壁面をつかっての展示の内容の面白さ、すさまじさに驚かされた。

島田さんに教えていただいた荻窪、八丁交差点の近くにある本屋Tittleを訪ねることができたのは、思いもよらぬプレゼントを授かった思いがした。誠光社とはちがう、しかし一冊一冊が呼びかけてくる本がどの棚にもあった。ああ、こんな本屋さんが近くにあるといいなとの思い。
【福岡市内には、キューブリックという心弾む本屋があるが(警固、箱崎)、自宅からは車で30~40分、箱崎店は都市高速を使っての時間。箱崎店では、2回のパンづくりをしているスペースで面白い企画を次々にやっていて、5月10日の夜7時からは若松英輔さんの講演があり、なんとか駆けつける事ができた。】

Titleを訪ねた日には2階のギャラリーでは、何も行われていなかったが、本屋にギャラリーという場があると、そこがその地域での新たなこの上ない出会いの場となると思われ、店の(活動)の広がりが感じられた。どんな場が生まれていくか楽しみだ。
【そのことを早くも知らせてくれたのが、店主の辻山良雄さんとnakabanさんの新著
『言葉の生まれる景色』(ナナロク社)だ。Title の2階ギャラリーで始まった同書の「原画展」が、現在、全国で巡回展示中だとのこと。『365日のほん』(辻山良雄、河出書
房新社)とともに面白く読んだ。】残念だったのは、時間がなくて、1階の奥にあるカフェに行けなかったことだ。




驚きはまだ続いた。滋賀の友人から一枚のチラシが送られてきた。
『 のバトンをつなぐ 前川恒雄「移動図書館ひまわり号」復刊記念のつどい』
2016年9月2日(金)PM2時~5時
◆第1部 『移動図書館ひまわり号』でつなう対談
     前川恒雄さん(元滋賀県立図書館長)✕ 島田潤一郎さん(夏葉社代表)
◆第2部 島田さんを囲んで、フリートーク
・会場 草津市立市民交流プラザ大会議室
・主催 滋賀の図書館を考える会

滋賀の友人から送られてきたチラシ
これはもう、行くしかない。博多駅前から京都行きの夜行バスで駈けつけることになった。うれしい時間と懐かしい出会いを授かった。

「志のバトンをつなぐ」2016.9.2
前川恒雄『移動図書館ひまわり号』復刊記念のつどい※記録・滋賀の図書館を考える会
『点』第10号‥2016.12.25 滋賀の図書館を考える会・編集発行
夏葉社の本では、どの本もその装丁に驚くのだが、昨年出版された『庄野潤三の本 山の家の本』は、まずその装丁が美しい。書店の店頭で、「山の上の家」というタイトルと表紙の静かな書斎の佇まいの写真に惹かれて思わず手にした本が夏葉社のほんだった。手にしてうれしくなる本だ。



ページをめくり、庄野潤三を初めて読む人へのこの上ない本となっていること、その編集の力に眼を見張った。巻頭の佐伯一麦さんの寄稿に続き、選びぬかれた庄野潤三の五つの随筆、短編なのですぐに読める。それに「子どもたちが綴る父のこと」(長男、長女のエッセイ)、「庄野潤三を読む」では岡崎武志さんのエッセイ。

「全著作案内」では、宇田智子、北条一浩、島田純一郎、上坪祐介の各氏の文章、宇田さんは沖縄の那覇の牧志の市場の向かいで、ウララという小さな古本屋をしている人だ。何年か前、福岡市内の欅通りで、毎年秋に開かれている「ブックオカ」のイベントに来られていたとき、お話を聞き、路上の一箱古本市のお店で本を買ったことがある。島田さんが、この人だと選んだ人だと思われるが、島田さんを含めて4人で書かれているのが面白い。その他に、「単行本未収録作品」。

山の上の家の写真がとてもいい。山の上の家での、ときの気配が伝わってくるようだ。この本の大きさがいい。手にすることがうれしい判型の扉を開くと、山の上の家で時間をかけて育まれた豊かなものが、立ち現れてくる。

 夏葉社 natsuhasya.com

一冊の本との出会いから、次々に広がっていく新たな人や本との出会い、犬も歩けばと言う次第です。

追記

後日、ノドカフェの坂本強美さんから電話があり、「こんど、『アルテリ』を取り扱うことになりました。」とのこと。出前の本で、石牟礼道子さんの一周忌のときに、『花を奉る 石牟礼道子と渡辺京二の本』と題して、関連する本を持って行ったことがある。その本の中に、『アルテリ』の何号かも入っていた。

人口10万人をこえる糸島市だが、本屋さんはわずかに2店しかなく、そのいずれの本屋さんも『アルテリ』をおいていない。これまで、市外のあちこちの本屋さんで買い求めてきたが、これからは市内で、しかもこの小さなブックカフェで購入できる。今日、3月29日、早速購入してきた。2ヶ月ぶりの『ノドカフェ』の本棚は面白そうな本が一気にふえているように思えた。明日は出前の本の入れ換えをするため、今日に続いてでかけるが、その本棚をみるのが楽しみだ。

坂本敏幸さんは自然農をしていて、自然農の野菜の販売、強美(きよみ)さんはリラクゼーションの施術も。

販売している本、新たな出版社の本も見られる。

風信子文庫(2月~3月) 森崎和江さんの本など

子どもの本も。
『アルテリ』(風信子文庫)
『アルテリ』について
創刊号 2016年2月22日発行〈年二回発行予定〉
「アルテリ」七号 2019年2月22日〈年二回発行予定〉

発 行  アルテリ編集室 熊本市中央区新市街6ー22 橙書店内
表紙写真 磯さくら
デザイン 大畑広告準備室
協 力  清正(猫)、タロー(猫)

雑誌は編集後記から読む。創刊号の「編集後記」が面白い。無断引用は禁じられているため、引用はできない。興味ある方はぜひ手にしていただきたい。

渡辺京二さんのある一言から始まったとある。「アルテリ」はどんな意味か。熊本ゆかりの人たちの、どんな思いがそこにこめられているか。何を目指しての場であるか。

創刊号の表紙には波板のトタンを屋根と壁に打ちつけている古い建物の写真
表紙を開くと、同じ建物だが、より不透明で輪郭がおぼろな写真

その写真のページをめくると
目にとびこんでくるのは

雑誌「アルテリ」刊行に寄せて   石牟礼道子さんの言葉だ

最初の言葉に うたれる
それにつづく言葉に うたれる
そして ゆらめく場からも なお  
若い人たちに ことばをおくる
石牟礼さんの いのちの声に おどろく

次のページはめくらないでも、書き手はその人にちがいない 
どんなタイトルか  興味深い

「激励」 ソウなんだ

その次はなんだろう わからない

そうか 目次 がくるのか

目次には十二人の名前

名前を聞いたことがあるひと ないひと
そのいのちのこえに 耳をすませたい