2019年4月28日日曜日

No.27  糸島地区(旧・前原市、二丈町、志摩町)で、 初めてリクエスト・サービスが始まったのは  

糸島市立図書館では、日本で初めてリクエスト・サービスを1965年に始めた東京都の日野市立図書館に遅れること54年、昨年の2018年4月から県外の図書館からの相互貸借も行われるようになり、ようやくリクエスト・サービスが実現した。なぜ糸島地区で図書館サービスが始まった1998年4月から実施されず、その実現まで20年もかかってしまったのだろうか。そのことを問うことは、今、これからの糸島市の図書館を考える上で大切な要点だと思われる。そのことを考えるために、まずは日本でリクエスト・サービスがどのように始まったかを振り返ってみたい。

リクエスト・サービスはいつ、どのように始まったか

日野市立図書館は1965(昭和40)年9月、「昭和四十年当時の市立図書館としては、破天荒の図書費1,000万円を計上し」(『みんなの図書館入門 全域奉仕篇』図書館問題研究会 1982)【注:実際は昭和40年度の図書費は500万円、翌41年度から1000万円となる。】当時500万円の「図書費をもった市立図書館は政令指定都市以外にはほとんどなく、200万円でも多いと思われていた時代」であった。(『移動図書館ひまわり号』前川恒雄 筑摩書房 1988.4; 夏葉社 2016.7 復刊)、
移動図書館による貸出業務を37ヶ所で始め、翌1966年には移動図書館2号車の運行(55ヶ所の駐車場)を始めるとともに高幡図書館、多摩平児童図書館(電車利用)の2館の分館を開館した。以後1972年までの7年間に5つの分館を開館してから1973年4月に2200㎡中央図書館を開館して全域サービス網を整備、1977年12月には市役所内に市政図書室を開室している。〈1965年当時の人口7万人弱。1978年4月1日現在の人口136,878人、面積27.11k㎡〉

なぜ一台の移動図書館から始めたか

「日野市立図書館を移動図書館一台で始めようとしたのは、一つには、図書館は建物ではないことを市民に知ってもらい、そこから出てくる要求にそって、システムとしての図書館を作ってゆこうとしたからである。現在、中央図書館、七つの分館、二台の移動図書館に発展しているが、発足当時は誰も想像さえしなかったことである。日本の公共図書館は、その後利用が急増し、図書館も増えている。しかし、システムとしての図書館を作ろうとする市は、依然として少ない。」(『われらの図書館』前川恒雄 筑摩書房 1987)

「図書館は建物ではない。資料と情報を市民に提供するためのシステム全体が図書館なのである。」(『われらの図書館』前川恒雄 筑摩書房 1987)


私が住む糸島市や隣接する福岡市の図書館(そして全国の市町村立図書館の大半の図書館)のもっとも大きな課題の一つが、市民が「市内のどこに住んでいても、だれでも」利用できる図書館サービス網(分館、移動図書館、中央館)の整備の問題 である。

図書館サービス網が未整備で身近に図書館がないため、市民がどれだけ利用できないでいるかを鮮やかに示しているのが、糸島市の場合でみると貸出密度(市民1人当たり年間貸出点数)の低さと小学校区ごとに見られる貸出密度の大きな格差だ。(「小学校区別貸出密
度」)
福岡市の場合でいえば、政令指定都市20市の中で最下位の利用度、「図書館砂漠の
まち」と言うほかない、分館の圧倒的な少なさや移動図書館も運行していない在りようだ。何より問題だと思われるのは、市民が「市内のどこに住んでいても」(どこでも)「だれでも」利用できる図書館づくりに向けての市の図書館計画が未だ作られていないだけではなく、今、その計画を作っていこうとする動きが見られないことだ。

市民が日々暮らす生活の場で、だれもが、どこに住んでいても図書館を利用できることを願う市民にとって、今から54年前に一台の移動図書館で日野市立図書館を始めた、当時34歳の図書館長前川恒雄さんの54年前の言葉が、2019年の今、現在の言葉としてあることに驚く。

「市の全域にサービス網をつくりたい。図書館は市民生活になくてはならぬものであるべきだから、市民が歩いて行ける場所になければならない。つまり、いくつもの分館と中央館があって、それらが一つのシステムとして有機的に結ばれ、どこにある本でもどこででも使えるようになっていなければならない。
 しかし、市に一つ図書館ができてしまえば、それがどんなに貧弱な




メモ

・ 日の開館当時の日本の図書館の状況  「市民の図書館」から

・分館の整備 東京都の図書館政策

・日野に続く図書館があったから

・望ましい基準










糸島地区での図書館は いつどのように始まったか

糸島地区(2010年1月の糸島市誕生以前の前原市、二丈町、志摩町)に初めて公立の図書館ができたのは1998(平成10)年12月に前原市に移動図書館が開館してからのことで、日野市立図書館の開館から43年後のことだ。それまでこの地区には公立図書館はなく、公民館図書室があるだけで、利用は極めて低い状態だった。日野市立図書館では移動図書館の

合併前の糸島地区(前原市、志摩町、二丈町)、そして合併後の糸島市を生活の場とする市民として図書館

図書館に所蔵していない本でも、リクエストされた本は、購入するか、県の内外の図書館や国立国会図書館から相互貸借により借り受けて、「なんでも」提供するリクエスト・サービスは、図書館のもっとも基本的なサービスであるが、糸島市図書館で実際にそのサービスが行われる様になったのは、先に述べたように2018(平成30)年4月からで、糸島市図書館の前身である前原市図書館のサービスが始まった1998(平成10)年からは10年後のことである。

糸島市ではなぜリクエストサービスの基本である、図書館に未所蔵の本の県外の図書館との相互貸借が図書館の開館当初からなぜ行われてこなかったのか。【糸島地区での図書館は、合併前の前原市で1998(平成10)年、1台の移動図書館で始まり、2005(平成17)年に前原市図書館(通称パピルス館)開館。旧二丈町、旧志摩町には図書館は2010(平成22)年の合併で糸島市となるまでなかった。】

そのことを問うことは、これからの糸島市の図書館を考えていく上でも大事なことだと思う。そのためには、前原市図書館の開館までの経緯や合併後の糸島市図書館の動きを知ることがその際、日野市立図書館の実践は大切な示唆を与えてくれる。日野市立図書館で「なんでも」(リクエスト・サービス)がどのように始められたか、そのことを鮮やかに伝えてくれるのが日野市立図書館を始めた前川恒雄さんの『移動図書館ひまわり号だ』(夏葉社2016.7復刊/1988.4筑摩書房)その仔細についてはあらためて触れたい。

糸島地区で図書館が始まるまで 
1990(平成2)年5月、苅田町立図書館開館
・前原市の池口由美子さん、苅田町の給食センターを見学した際、当時の苅田町の町長沖勝治氏から町の図書館の見学をすすめられ、苅田町立図書館を見学、衝撃を受ける。以後、何度も同館を訪れると共に、市民として前原市で図書館づくりの運動を始める。前原市議会議員として図書館づくりに取り組む。
1994(平成6).「図書館建設の援助をする会」の図書館建設に関する署名
 16,420人分を前原市長に提出(糸島での図書館づくりは市民の運動から始まった。)
1997(平成9)年、移動図書館導入を前原市が決定
1998(平成10)年12月.移動図書館開館
1999(平成11)4月.行政機構改革により社会教育課図書館係を設置。正規職員1名配置、図書司書1名増員(係員4名)となる。

2005(平成17)年11月.「前原市図書館」開館
2010(平成22)年1月、合併により糸島市の誕生、「糸島市図書館」に名称変更。それまで図書館がなかった旧志摩、二丈町の住民も、市民として初めて図書館を利用することになる。

「そのことを問うことは、これからの糸島市の図書館を考えていく上でも大事なことだと思う。その際、日野市立図書館の実践は大切な示唆を与えてくれる。日野市立図書館で「なんでも」(リクエスト・サービス)がどのように始められたか、そのことを鮮やかに伝えてくれるのが日野市立図書館を始めた前川恒雄さんの『移動図書館ひまわり号だ』(夏葉社2016.7復刊/1988.4筑摩書房)


日野市立図書館は市民が利用する図書館としての建物がない状態で,1台の移動図書館から、図書館サービスを始めた。市民の声のあるところ、市民の身近に順次、分館をつくり(7館)、最後に本館をつくった。
日野市立図書館に続く三多摩地域や各地の図書館の活動や1970年の東京都の図書館政策,
そして同じ1970年に日本図書館協会が刊行した『市民の図書館』が全国に、図書館は何をするところか、いま、図書館は何をすべきかを指し示して、全国各地の図書館づくりの運動、住民と図書館員に大きな力を与え、各地の図書館づくりを進めてきたのだと思う。

『市民の図書館』



【「公共図書館とは何か」、「いま、市立図書館は何をすべきか」4つの目標と当面の3つの最重点目標〈①市民の求める図書を自由に気軽に貸出すこと。②児童の読書要求にこたえ、徹底して児童にサービスすること。③あらゆる人々に図書を貸出し、図書館を市民の身近に置くために、全域サービス網をはりめぐらすこと。】

が全国に、図書館は何をするところか、いま、図書館は何をすべきかを指し示し、全国の図書館づくりの運動、〈市民と図書館員に〉、大きな力を与え、各地の図書館づくりを促して来たのだと思う。

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