2021年8月31日火曜日

東北、仙台からの風     No.79

前回のブログでは、九州由布院と東北仙台から届いた冊子や本のことを紹介するつもりであったが、 仙台から届いた本については今回、号をあらためてお伝えすることに。
文庫本より高さが1センチほど低い、手のひらにおさまる2冊の小さな絵本は薄桃色の張りのある紙のケースに入っていた。ーーーーーーーーーーー 1.『おいぬいし』再話・絵と文 あおのこるり ーーーーー これは永沢正一郎さんという人の家で代々つたえられてきた、5代前の庄之助さんとおおかみとのお話。著者が正一郎さんと、母親のみえさんから伺った話や、参考資料を基にしてできるだけ忠実に再話、創作したもの。「あとがき」によると「庄之助さんの家族は、困ったことや、不幸なことがあるたびに、何度も、おおかみにいのししを運んでもらい助けてもらった。」『最後の二ホンオオカミ』(那須正幹の動物ものがたり7,くもん出版 2003)の著者、那須氏によると、「二ホンオオカミは、古代から大口の真神とたたえられ、田畑を荒らすイノシシ、シカを退治してくれる農耕神として、人間からあがめられてきました。オオカミの名は、大神からきている」とあるように、おおかみは神聖化されていて、おいぬさま(おおかみさま)とも呼ばれていました。」ーーー 「庄助さんの家族は、おおかみをおまつりするために、石碑を立てました。石碑には、三峰山ときざまれました。三峰神社(埼玉県)は、おおかみをまつる神社でした。それを、「狼石」(おいぬいし)と、呼ぶようになりました。今でも永沢家では、五月一日、田植え時期になると、あずきご飯(うるち米)2とお神酒とお煮しめをおそなえして、おおかみに感謝し、豊作をお祈りしているそうです。」ーーーーー 「怖いばかりのイメージが強い二ホンオオカミが、かつて人間とこのような魂の触れ合いを持っていたということに驚き、また、すでに種が途絶えてしまったという事実に、とても痛ましいという気持ちがわいて来ます。北米、ロシアや中国にわずかに生き残っているおおかみを絶滅させないための教訓をこの物語は示してくれているような気がします。」ーーーーー 「おいぬいし」のお話は、背中にまきをいっぱい背負った馬と庄之助さんが、背中のまきの重みで、転びそうになりながら、中山峠を一緒に息を合わせて一歩一歩のぼっていく場面からはじまっている。足を踏ん張り顔が真っ赤になって馬を引っ張る庄之助さんの体じゅうから汗が吹き出している。「馬の体からも汗と湯気が、鼻息と共に立ちのぼっています。」、臨場感あふれる絵にひきこまれる。長く語り伝えられてきた話に静かに耳かたむけると共に、その地の人々の暮らしや仕事(まき売り)、そして馬の働きに目をこらす著者の姿がしのばれる。東北の地でこのように過ごしてこられたのだと。お盆前のうだるような暑さが一転、盆過ぎからは福岡県だけでなく各地で大雨の被害が続出する日が続いた。そんな最中にあって彼の地の友のたゆみない歩みから愉しくて深い元気を手渡されていたのだった。ーーーーーー ーーーーー「あとがき」についで、11冊の「参考資料」が記されていたーーーーー ①「幻の二ホンオオカミ」柳内賢治・さきたま出版会・1993 ーーー②「狼さま」戸口健・幹書房・2003ーーー③「最後の二ホンオオカミ」那須正幹・くもん出版・2003ーーー④「帰ってきたオオカミ」リック・バス・南昭夫(訳)・晶文社・1997―――⑤「ブラザー・ウルフ」ジム・ブランデンバーググ(写真・文)・椎名誠(序文)・今泉忠明(訳)・1995ーーー⑥「白いオオカミ」ジム・ブランデンバーグ・中村健・大沢郁枝(訳)・ JICC出版・1992ーーー⑦「浮世絵に描かれた人・馬・旅風俗―東海道と木曾街道―」神奈川新聞社・2001ーーー⑧「いずみのふるさと」総集編・ 新しい杜の都づくり泉区協議会・ソノベ・2002ーーー⑨「ぶらっと根白石」根白石探検隊編集委員会・仙台市根白石市民センター・1999ーーーーー ⑩「せんだいむかしばなし」せんだいむかしばなし編集委員会・宝文堂・1989ーーー⑪「よみがえるオオカミ」飯館村山津見神社復元天井絵展・福島県立美術館・2016ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 2.『かわらのひみつ』ぶん・え  あおのこるり むかし、ならのみやこにすんでいた、かわらしょくにん、から吉という男のはなし。 から吉は、耳が聞こえず、うまくしゃべることができない。いつも、ものをじっくり見てから、ねんどをこねて、みごとな形のかわらを作った。いっしょにはたらくのは、かわらでできた二人のかわらしょくにん。から吉は、焼いたかわらを屋根の上にのせておく。そこを通る人が、好きなかわらを注文する。もも、りんご、なす、しし、うさぎ、きつね、ねこなどが、屋根の上ににぎやかにならんでいた。ある日のこと、おつきさんが、ぽっかりでて、にっこり笑うころ、から吉がそろそろねようと、ふあーっとあくびをしたとき、てんじょうのあなから、もものかわらがおちてきた。から吉がふーっと、いきを吹きかけると、もものかわらは、てんじょうをさしてぴょんぴょんはねだした。から吉は、祖音へ出て、同じようにかわらたちに、いきを吹きかける。 すると・・・。《どこから、このようなお話がまいおりるのか、つづきは見てのおたのしみ》

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