2022年11月29日火曜日

「福岡市は図書館砂漠のまち」って?どういうことか No.104

福岡市長選挙公開質問状の添付資料についての説明です。(どんな資料を添付したか) 公開質問状には、資料Aと資料1~3の4点の資料を添付しています。 公開質問状では11の質問をしていますが、なぜそのような質問をしたか、その根拠となる資料です。 《資料Aについて》・・・・・・・ 1⃣資料AはブログNo.101に掲載していますが、「図書館を楽しむ」市民ネットワーク・福岡の市民の会が、福岡市の図書館が直面している課題、問題点だと考えていることを、できるだけ簡潔に書いたものです。 「私たちはなぜ公開の質問をするのか?ーー「公開の論議を!」と題しているのは、幼児からお年寄りまで、すべての福岡市民に関わる「福岡市の図書館の今とこれからの問題」について、福岡市が、「市民のだれもが」利用できる図書館像とそれに至る道を、これまで市民に示し提示することなく今日に至っていると考えるからです。  ーーーーー 2⃣《図書館砂漠のまち=福岡市を図書館のある街に〉(2022.11)   この言葉に福岡市民である私たちの願いと希望がこめられています。   住みよいまち、住み続けたいまち、市民が誇りとするまちには、   市民の暮らしの中に、市民の身近に、市民の生活圏に図書館が必要です!  ーーーーー 3⃣《福岡市は図書館砂漠・・・市民の身近に図書館がない!》  とはどういうことか。    ※市民の利用度がきわめて低い。(コロナ禍前の2018年・平成30年度でみると)  ・市民1人当たり1年間の貸出冊数(貸出密度)は2.6点  ・政令指定都市20市の中で最下位  〈第1位さいたま市(人口131万4千)7.5点の約1/3の貸出〉  〈福岡県内53市・町の中で50位(県内第1位は水巻町13.8点)〉  ・人口30万人以上の市の望ましい貸出密度8.7点の1/3の貸出  (東京の特別区と政令指定都市を除く)  図書館を利用したいと思っても、近くにないから利用できない、  という市民があまりにたくさんいる!・・・図書館砂漠だ    ーーーーー 4⃣なぜ、福岡市民の利用がこんなに少ないのか。 (1)➡市民の身近に、市民の生活圏(中学校区)に図書館がないから。    市民の生活圏=中学校区に1館の図書館をーーー  (※中学校区設置率➡公立中学校数と図書館数1対1を100%として算出)   ・福岡市の中学校区設置率は16%(図書館数12÷市立中学校数69校×100)    福岡市(155万4千人)は人口12万9,500人に1館の図書館。  〈政令指定都市中、貸出密度第1位のさいたま市は44%、52,560人に1館。   人口131万4千÷25館=52,560人(さいたま市はさらに移動図書館1台と   サービスステーション2がある。人口比福岡市の2.5倍の図書館数〉ーーー   図書館の数が違う!   ※なぜ中学校区に1館の図書館が必要か。 ①「1.市町村は、住民に対して適切な図書館サービスを行うことができるよう、住民の生活圏、図書館の利用圏等を十分に考慮し、市町村立図書館及び分館等の設置に努めるとともに、必要に応じ移動図書館の活用を行うものとする。(略)当該市町村の全域サービス網の整備に努めるものとする。」   (”全域サービス網”の整備が要(かなめ)のことです。) 「3.公立図書館の設置に当たっては、サービス対象地域の人口分布と人口構成、面積、地形、交通網等を勘案して、適切な位置及び必要な図書館施設の床面積、蔵書収蔵能力、職員数等を確保するよう努めるものとする。」 「図書館の設置及び運営上の望ましい基準」(平成13年・2001年文部科学省告示、平成24年・2012年改正)】    1950年にできた図書館法に基づいて出された文部科学省の告示、に示された対応を、福岡市はやっていない。この一歩の歩みだしを始めていない。 ②「市町村の図書館は、おおむね中学校区を単位とした住民の生活圏に整備すること。 (市町村の図書館は、住民が日常利用する生活便利施設です。子どもや高齢者、障害者にとって身近で安心して利用できることが必要です。すべての住民が利用できる身近な図書と。館とするために、中学校区を生活圏域として考え、そこに設置することを目標とすべき。)」 (中学校区=1校区当たり平均可住地面積は約8㎢)  【「豊かな文字・活字文化の享受と環境整備ー図書館からの政策提言」日本図書館協   会.2006年、2013年改正】 ③(事例)東京都調布市(23万3千人、11館、貸出密度10.99、専任64(うち司書47) ・非常勤・臨時110) ・人口2万人、・2つの小学校区、・半径800m、左記の3つを基準に10分館設置。  10館目の佐須分館は1979年・昭和59年に開館。(数値は2018年度)    (2)資料費が少ない。(豊富な資料と資料の新鮮度が図書館の魅力であり力です。) ・市民1人当たりの資料費は78円。政令指定都市中 16位。 ・第1位は静岡市199円(貸出密度5.8,2位)、さいたま市7位、124円。 ・千葉県浦安市(2018年度)人口16万8千人、8館、貸出密度10.32、専任27(司書27)非      常勤・臨時 58(うち派遣7):1983年の中央図書館開館時から、専門職館長のもと、 「歩いて10分の図書館網を整備。21,000人に1館。福岡市12万9,500人に1館の5.6倍の 図書館数。ーーー ※福岡市と浦安市の2007∼2016年度、10年間の資料費の総額の比較。(人口比、約9倍)      福岡市(人口150万1千人)11億9,856万6千円      浦安市(人口16万4千人) 11億1,113万2千円 【福岡市の約93%】 (3)福岡市の分館の広さ(面積)・・・人口比からみて小さい。 〈理由〉 福岡市民図書館開館(1976年)の翌年から市内各区の市民センターに設置された図書     室は、当初公民館図書室の位置づけで、図書館の分館ではありませんでした。 1988年 市内全区(7区)に図書室ができましたが、それらが図書館の分館になったのは、 1996 年(平成8年)です。このため、以後新しくできた分館も当初の公民館図書 室がモ デルとして作られてきたため、その地域の対象人口にふさわしい分館として構想、計画さ れたものではなく、施設規模、蔵書数、年間購入点数、職員体制ともに不十分なものになっていることも、利用度を低くする要因となっています。ーーー 「2.地域の図書館は800㎡以上の施設面積でつくり、5万冊以上の蔵書をもち、3人 以上の専任職員を配置すること。」(前述4⃣ー(1)ー②の「図書館からの政策提言」) 福岡市の分館はすべて800㎡以下です。 東分館753㎡(旧館の新装開館で、市内分館中、もっとも広くなった。335㎡➡753㎡)、 和白644㎡、博多541㎡、博多南563㎡、中央486㎡、南478㎡、城南562㎡、早良520㎡、 西552㎡、西部610㎡、早良南672㎡(2021年6月開館)。ーーーーーー 【北九州市・八幡西図書館、3,762㎡、2012年開館、北九州市の分館16館中、もっとも      広く、貸出も一番多い。年間38万8千点の貸出(2020年度)。中央館(4,594㎡、23万6千点)、中央館の1.6倍の貸出。】ーーー 5⃣なぜ福岡市では、1976年(昭和51年)の福岡市民図書館開館以降、市民のだれもが、市内のどこに住んでいても利用できる図書館づくりが行われてこなかったのでしょうか。  そのもっとも大きな要因は職員体制にあると、私たちは考えています。〈2018年度〉 (1)福岡市155万4千人〔専任31(うち司書2)、非常勤・臨時114、派遣7〕   さいたま市131万4千人〔専任165(うち司書96)、非常勤16、派遣54〕   浦安市  16万8千人〔専任27(うち司書27)、非常勤・臨時58(うち派遣8)  人口155万人をこえる大都市の図書館に「司書」(専門職員)が2人 (2)2007~2020年度、福岡市と北九州市の専任職員(うち司書)の10年間の推移の比較。          ・福岡市 46(うち司書11)➡31(うち司書2)、11人から2人に  ・北九州市20(うち司書2)➡39(うち司書13)、2人から13人に (3)福岡市の1年間の市民の貸出しの70%をしめる11館の分館に専任職員は0。  福岡市の分館11館には、専任職員はいません。0人です。 (4)図書館長と副館長の任期について。2007~2018年の12年間で。  図書館長は6人(3年1人、2年3人、2年目1人、1年1人)。  副館長は事業管理部長事務代理9人。 いずれも短期間。福岡市の図書館の今とこれからを考える舵取り、要の専任職員が不在ではないかと考えられます。福岡市の図書館の現状と課題を考え、市民だれでもが利用できる全域サービス網の図書館計画を立案し、その実現に責任をもつ職員がいない状態が、1976以来続いています。 【公開質問8で「職員体制」について、「市の職員で司書の資格を持ち、図書館を希望する職員の配置(異動)や、新採用職員で司書」を採用することについて質問しています。】 (さいごに) すべての福岡市民が利用できる、図書館政策策定の早急な取り組みを!まず移動図書館の運行を! 【問7では「図書館計画の策定には時間と大きな経費がかかります。できるだけ早く移動図書館の運行から始めながら、基本計画づくりにとりかかれば、市民の身近に図書館をに、より早く、分館網の整備より、はるかに低い経費で取りかかれると考えますが、お考えはいかがですか。】と。ーーーーーー 資料1について ・「政令指定都市 貸出密度(市民1人当たり貸出点数)順位表2018(平成30)年度 /2020(令和2)年度の実績」 (貸出し順位はコロナ以前の2018年度の実績による。2020年度の数値は()に。 ・1位のさいたま市から最下位の福岡市まで、20市について。 ①人口②貸出数③貸出密度④到達度(人口30万以上で「望ましい数値」に対しての) ⑤登録率⑥図書館数⑦中学校数⑧中学校区設置率⑨資料費⑩人口当たり資料費 ⑪職員〔専任(うち司書)・非常勤・臨時・派遣〕 ・参考(2016年度の実績) ①東京都調布市②文京区③東京都日野市④千葉県浦安市⑤滋賀県東近江市 ・調布市の図書館計画について ・「東京都の図書館政策」(1970)について ※福岡市の図書館の資料費は、市民1人当たり78円(平成30年度政令指定都市中、16位。  これが、この年度だけでなく、ずっと低い状態であることが問題です。 言葉による説明 ①「〈図書館がある〉とは、〈図書館の看板が下がった建物がまちにある〉ことではなく、 そのまちの隅々までサービスが行きわたっていて、いつでも、誰でも、どこに住んでいて も、どんな資料でも利用できる、その態勢がととのっていることをいう。」p.15 「まちに図書館があるというのは、どこに住んでいても、住民がそこで役に立つサービス を手にすることができる、納税者にふさわしい利益を得、あるいは還元を受けることがで   きることでなければならない。図書館に必要な資料が揃い、自由に利用でき、職員のサー ビスをしっかり得られなければ、まちに図書館があることにはならない。」p.173 「本は買って読むもの、日本人は借りるよりも自分のまわりに本を置きたがる、そのよう な考えが何の根拠もないことであることは、多くの図書館の実績が示している。その実績 を生むのが十分な図書費であり、地域地域を覆うサービス網であり、職員体制であることも、 あらためていうまでもないことだ。」p.175 「図書館長は、そのまちの図書館サービスの最高責任者である。図書館の大小、自治体の 大小を問わない。住民にどのようなサービスを届けるのか。これからサービスをどう発展 させていくのか。それを考え計画を立てる。司書職員を指揮し、相談にのり、業務を滞り なくすすめていく、それが図書館長である。 ふたたびデンマークの図書館法を引くと、その第二条で「図書館長は他の職員の援けを得 て資料を選択し、自治体に対してその責を負う」といっている。住民が必要とする、役に 立つ資料群の構成が、図書館長の極めて大切な責務であることを言っているのだ。深い教 養、資料についての広範な知識、選択の理論と技法、そういったものを身につけていない で、どうして図書館長が務まるだろうか」p.33 【『図書館の明日をひらく』菅原峻 晶文社 1999年】 ②利用者にとって、図書館の魅力に関わる3つの柱 1.図書館長・・・(「図書館長の仕事」をする図書館長がいるかどうか) 「図書館とはまったくゆかりのないところから異動で来た、本に何の興味もない館長か、 それとも、専門の教育を受けて、本という海を航海する船=図書館をしっかりと操舵し ている館長か。」ーーーD=ディレクター=館長 2.専門職員・・・「中身の伴った資格を持ち、利用者の役に立つ魅力的な専門職員 がいるどうか。」・・・A=ATTRACT=魅力=魅力的な専門職員 3.新しい本「新しく内容豊かな図書をきちんと購入し続けているか」(資料費:予 算)・・・N=NEW BOOK=新しい本 【「図書館にはDNAが大事なのです」菅原峻(図書館計画施設研究所)『アミューズ』  2000年1月26日号】ーーーーーーー 資料2-(1)について  「2018(平成30)年度 福岡県内公立図書館貸出順位表」  (内容) ・福岡県内53市町の図書館の貸出密度(住民1人当たり年間貸出点数)順位表 ・①自治体名②人口当たり貸出点数(2018・2020年度③中学校設置率④登録率  ⑤人口1人当たり資料費 ・参考自治体・図書館数(貸出密度、中学校区設置率)、移動図書館=BM  ①滋賀県愛荘町2館(13.13;100%)②大阪府熊取町1館(8.27;33%) ③愛知県田原市2館、BM2台(9.7;50%)④千葉県浦安市7館(10.32;88%) ⑤東京都日野市7館、BM1台(8.78;89%)⑥東京都調布市11館(10.99;100%) ⑦滋賀県東近江市7館、BM2台(8.1;70%)福岡市50位、11館(2.6;16%)、北九州市41位、17館(4.07;27%) 福岡市の中学校区設置率=16%➡図書館砂漠・福岡市の所以(ゆえん) ・福岡県内第1位ー水巻町1館(11.83;50%)、第2位福津市2館(11.51;33%) ・貸出密度7点以上―12市町、6点台ー7市町/ 2点台ー2市町、1点台ー2町 ・全国平均(貸出密度)5.37。福岡県平均4.56ーーーーー 資料2-(2)について 「2007年(平成19年度)福岡県学校図書館図書購入費(予算措置率)順位表」 (いったいこれは何か。どういう資料か。) 文部科学省は、学校図書館(小中学校)の蔵書があまりにも貧しい(古くて少ない)現状を改善するため、1993(平成5)年から、『学校図書館図書整備5カ年計画』を立てて、計画年度に毎年、各自治体に対して地方交付税として交付してきましたが、交付額をどう使うかは、自治体の判断に任されているため、交付額のどれだけを予算化したか(予算措置率=交付額に占める予算計上額の割合)は、自治体によって大きな違いがあります。これまで文部科学省では、2008年4月に1度だけその実態調査を明らかにしたことがあります。2007年(平成19)度に交付した図書購入費200億円のうち、実際に予算計上された額は約156億円で、全体の78%にとどまっていました。上記の「順位表」はこの時に公表された福岡県内の各自治体の予算措置率の高い順に記載したものです。福岡県の平均は97.1%でしたが、福岡市は86.1%、県内69自治体中、34位の予算措置率でした。1位が福津市の211.8%、県内22の自治体が100%をこえていました。(5位までが150%をこえる。)最下位69位は小竹町の32.9%でした。全校平均78%の内訳は、小学校が85.8%、中学校が68.7%と、中学校がより低い予算措置率となっていました。 また第5次の2018年(平成30年)から、学校司書の配置に対しても地方交付税が交付されるようになっています。2022年(令和4年)4月から第6次「学校図書館図書整備5カ年計画」が始まり、文部科学省では、パンフレットで「学校図書館の充実には図書館資料・人材の充実が必要です。」と述べて、公立小中学校の蔵書の充実と学校司書の配置を推進を目指し、学校図書館図書整備に995億円(単年度199億円)、学校司書の配置に1215億円(単年度243億円)の交付が決まっています。 1993年(平成5年)以来25年間にわたって、学校図書館の充実のために交付されてきた貴重な図書費(2018年からは学校司書の配置拡充のための交付)が、福岡市では25年間にわたって、100%予算化されることなく、現在に至っています。公開質問10では、「私たちは子どもたちの一番身近な図書館である学校図書館の充実は何よりの急務であり、図書費と学校司書の配置について、少なくとも第6次『学校図書館図書整備5カ年計画』どおりの予算化が必要だと考えますが、どのようにお考えですか。」と質問しています。 このことでは、市民はもとより、学校関係者(校長、教職員等)においても、その実態が十分周知されているかが課題であるとも、会では考えています。

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