2023年1月30日月曜日

『みんなの図書館』2月号が面白い!No.106

『みんなの図書館』という雑誌を手にしたことがありますか。A5版(14.8×21cm)の小さな雑誌。 同誌は図書館問題研究会が編集している月刊誌で教育資料出版会から発行されています。その2月号、とても面白く読みました。そのいくつかを紹介します。 同誌では毎月、ほぼテーマ(特集)が決められていて最近の例では「図書館とコラボレーショ」’22.12月号、「小規模図書館が生きる道ほか」’23.1月号、そして今年の2月号は「特集:図書館に正規司書を」となっています。目次についで編集部より「特集にあたって」の文章があって(今回は文責:清水明美)、なぜこの特集をするかが書かれています。以下に引用します。 [特集]図書館に正規司書を―図書館に正規採用の司書を増やしていくために何ができるのか 昨年、2022年2月号の特集において「公共図書館における正規公務員の司書が、全数の1割に迫っている。」と書きました。各自治体においては図書館職員や住民が正規司書を増やすべく働きかける努力をしてきましたが、まだまだ改善にはほど遠い状況です。しかしこの1年の間に図書館問題研究会全国大会において、アピール「図書館法を改正して公立図書館に司書の必置を求めます」が採択されるなど、さらに改善に向けての歩みが進みつつあります。(『みんなの図書館』2022年9月号参照) 今回の特集では現行図書館法にはなぜ司書の必置がないのかを、図書館法制定の歴史研究から考察し、現在常勤の正規司書がいない自治体の調査報告、正規職員採用の先進地滋賀県の図書館職員・行政職員・住民からの報告を通して、なぜ専門職員司書が必要か、さらに正規であることの必要性について考え、正規採用の司書を増やしていくためにできることについて、考えるきっかけにしていきたいと思います。 --------------------------------------------------------- 特集で面白かった3つの文章 特集には5つの文章があるが、①「司書必置はどこに消えたのか——図書館法成立過程での司書規定の変遷」小形亮、②「司書のいない自治体一覧」大原明、に次いである3つの文章が私にはとても面白く思われた。(①~⑤の番号は筆者による。) 3つの文章はいずれも滋賀県の東近江市立図書館に関わるもので(私自身1995年4月から当時人口2万3千人の能登川町の図書館・博物館開設準備室、1997年11月の能登川町立図書館・博物館開館から、2007年3月東近市立能登川図書館・博物館退職まで勤務)、文章を寄せた3人のうち2人は東近江市立図書館の職員(司書)、1人は東近江市の市民。 1つ目は東近江市立永源寺図書館に勤務する前田さんの、 ③「あたりまえ」を積み重ねること――東近江市立図書館の市民 ・行政との連携。(前田笑) 東近江市立図書館が「行政や市民との連携」について行ってきた最近5年間の活動を中心に紹介。 人口約11万人の東近江市には7つの図書館(八日市・永源寺・五個荘・湖東・愛東・能登川・蒲生)があり正規職員(22)・会計年度任用職員(19)は全員司書で、「長年正規職員の司書として 働いてきた職員が館長・副館長になっています。(2023年度に1名採用予定)」 (因みに東近江市と人口規模の糸島市(人口10万人)では図書館3館、正規職員4(司書0)、会計年度任用職員27) 〔1.市役所各課との協働事業〕では市役所の各課と図書館が共同で行った活動を紹介しています。 〈最近では〉 〇(参画課から声がかかり、12月の人権週間に合わせて、市内各図書館で啓発展示。参画課が用意したパネルに合わせて図書館の資料を展示・貸出。 「人権について学ぶことのできるリストづくり」編集会議に参画課から2名、図書館から4名参加、作成、配布。その直後の図書館の全体会(全館共通の館内整理日に行う情報交換・研修などの集まり)の研修テーマを、同和教育や利用制限のある資料について、と定め参画課に研修内容の相談を行って実施。 「こんなふうに、市役所他課との交流があることによって、日々の新しい仕事が生まれたり、自分たちの資質を高める機会が生まれたりしています。」 〈健康福祉部との連携―高齢化社会に対応した図書館づくり〉では。 〇担当課(福祉総合支援課、2021年からは地域包括支援センター)の協力をえて、図書館職員の研修として認知症サポーター養成講座を実施。 〇健康寿命の延伸をめざす健康福祉部と、図書館の未利用者の開拓を行いたい図書館の思いが合致し、福祉総合支援課と共催企画。「図書館でいきいき脳活」(八日市・能登川・湖東・永源寺の各館で)、永源寺館では行政と図書館だけでなく、市民グループ「楽楽ひろばの会」とも連携。 〇「いきいき本の元気便健康プラス」、保健センターや福祉総合支援課と連携して地域に出かける事業を開始。2020年度末に移動図書館者を更新した際に、軽トラック改造型であるという身軽さを活かしたサービスを開拓、各集落で行われている交流サロンなどに出かけてゆき、移動図書館で資料の貸出を行うだけではなく、保健師による健康に関する話、認知症サポーターキャラバンメイトによる予防体操、司書による音読体験や ブックトークなどのプログラム。依頼者の求めに応じて組み合わせて提供。 また、〈教育・子ども行政との連携ー「子ども読書活動推進計画」をベースに 市役所のさまざなな課や市民ボランティアと手を取り合って、子供の読書環境の醸成に努める。 ①「教育研究所だより」(市の教育研究所が年に10回程度発行)に毎号司書による図書紹介コーナー ②教育研究所が主催する、小中学校教師の夏休みの研修で、ブックトーク絵本について司書が講師に。 ③幼児教育センターや幼児課(市内の幼稚園・保育所・認定こども園を管轄)と連携。2018年度から各園の園文庫整備支援事業を実施。潜在保育士、若手保育士を対象とした絵本に関する研修の講師。 ④「ルピナスさんの会」ー各地域のおはなしボランティアのグループの連合体ー各グループの代表と各図書館の児童サービス主担当者が年数回集まって情報交換。その中から提案された事業を形にしていく。(2017年度から「初心者向け絵本読み語り基礎講座」、司書が講師) 《目を引かれたのは》 〔2.図書館から市役所へ「仕事に役立つ図書館だより」〕 「東近江市職員の仕事に役立つ図書館だより」の発行、2018年4月より月に1回。  〈内容〉前月に受け入れた全資料から、4つのテーマ(①「行政・法律・社会」、②「教育・子ども・福祉」 ③「はたらく」、④「郷土を知る」)のもと、市職員にぜひ手に取ってほしい資料をリストアップ。 リスト形式で毎号50~60冊紹介。各ジャンルから1~2冊ずつを書影と短めの紹介文付きで掲載。さらに 「今月の1冊」としてピックアップした資料を少し長めの文章とともに巻頭で紹介。 また、雑誌や各種団体の刊行物などから、市に関する記事をピックアップして情報提供。 ※発行開始前の企画段階で、研修や事業での連携などでつながりのあった職員にサンプルを見せ、意見やアドバイスをもらっている。ペーパレスで、庁内のグループウェアにPDFで掲載、市の全職員が見られる。紹介した資料が掲載翌日にインターネットで予約されていたり、研修や会議の場で出会った職員から「毎月見てるよ」という嬉しい声も。 議会図書室への資料提供 ・2021年2月、市の議会事務局からの依頼で、議会図書室のリニューアルに協力。資料を手に取りたくなるような配架や書架見出しを提案。除籍や更新の作業を事務局職員と行う。その後、図書館資料を定期的に議会図書室に提供。時宜に適った資料や「東近江市職員の仕事に役立つ図書館だより」を毎月届ける。 〔3.市民と手を取り合う〕 〈市民の様々な活動への資料・情報や場の提供〉 ・「さぼてんのはな」(流産や死産を経験した人たちの支援グループ、当事者同士の交流の場を設けたり、亡く             なった赤ちゃんに着せるためのベビー服づくりに取り組んだり。)  2022年、「さぼてんのはな」がその活動を知ってもらうための展示をしたいと、図書館にもちかけ、市内の複数館で開催。その際、グリーフケアや周産期医療に関する図書館資料も展示・貸出を行う。 このケースのほかにも、市民の持ち込み企画や協働による展示や講演会などを多く開催していて、市民活動を通して図書館資料を活かす場となっている。 ・「楽楽ひろば」(永源寺館を地域住民でにぎわう場にしたいという思いを持った市民が始めたグループ、数々の連携事業)2019年の「いきいき脳活」で活動をスタートしたあと、保健センターの市民向けプログラム「まちリハ」を活用した事業を永源寺館で定期的に行う。保健センターとの連絡や広報への協力などで、図書館も積極的に関わる。 永源寺館では、日赤奉仕団の地域支部とともに図書館外構の美化活動や季節のお花やめだかの鉢の展示など、図書館の居心地がよくなるよう様々な工夫を。 〔4.社会福祉協議会との関係づくり〕  社会福祉協議会=「地域に暮らす高齢者や障がい者をはじめ、すべての市民が一人の人間として尊重され、お互いに理解しあい、協働して共に支えあいふれあいながら、住み慣れた地域において、安心して暮らすことができる福祉のまち」を目指して活動。➡図書館の大切なパートナー ・永源寺地区では、住民福祉計画「住めば都プラン」推進会議」に、2010年頃から司書が参加。  地域の「顔」(キーパソン)を知り、つながることのできる大事な機会。ここから生まれた事業➡①「地域で暮らす高齢者の知恵を伝えるワークショップ」、②社協の担当職員とつながることで、例えば移動図書館の訪問先として適切な施設・団体の情報を得る。(図書館の仕事に還元) 5.「そこら」さまざまな人と手を取り合い、地域資料をつくる  東近江市立図書館では、行政・市民・社協などさまざまな立場の人とつながりをもってきた。その精華ともいえる取り組み➡地域情報誌『そこら』の発行。 2014年から年に1度のペース。編集チーム=図書館職員、市役所職員、NPOまちづくりネットの職員で始まった。今ではそれに地元新聞の関係者やフリーのカメラマンなど、民間の人を巻き込んで展開。 市内の気になるお店や名所旧跡、魅力的な人物【キーパーソンだ!:才‣註】を(司書)自ら取材し、記事にっまとめ、紙面を編集。印刷にかかる費用は市の予算に限らず、メンバーの業務に関する補助金やまちづくりに関する支援金なども活用。 〔6.「正規職員の司書がいること」の意義〕 最初に記したように私が住む糸島市は東近江市と人口同規模であるが、図書館の正規職員は4人、うち司書は0である。これに対し東近江市は22人の正規職員、全員が司書である。糸島市の隣、人口155万人をこえる福岡市は政令指定都市20市の中で、貸出密度(市民1人当たり年間貸出点数)は最下位の2.6(2020年度)、図書館の正規職員は31人で、うち司書はなんと2人である。因みに政令指定都市中、貸出密度が一番高い人口131万4千人のさいたま市は貸出密度は福岡市の約3倍の7.5、専任職員は福岡市の5倍の165人、うち司書は96人で福岡市の48倍である。図書館数では糸島市3館、移動図書館(BM)0;東近江市7館、BM2;福岡市12館、BMは0;さいたま市25館、BM1,サービスポイント2である。 図書館にその人口規模にふさわしい司書がいるとはどういうことか。さいごに前田笑さんの文章を引用したい。 「これらの連携を振り返って思うのは、市立図書館の司書職員は、市民と行政の中間的な存在であるということです。日々カウンターで利用者と接し、書架の状態を確認し、社会の情勢を注視しながら選書にあたるわたしたちは、同時に市の職員であって、災害対応にもあたりますし、行政職員としての研修も受けます。それらは孤立した仕事ではなく、どこかでつながって循環している仕事です。また、一つ一つを 取ってみれば、とくに華々しくもなく、大きな予算も必要としない「あたりまえ」の仕事です。けれども、これらを積み重ねられてきたのは、司書であり、行政職員であるという立場の職員が、合併前からの実践と経験を連綿と継いできていること、そしてさまざまな年齢層の職員が安定した環境で働けていることによるのではないかと思います。ランガナタンの言う通り、としょかんは「成長する有機体」です。その成長を支えるのは、専門性と個性を発揮しながら長年働く司書職の集団ではないでしょうか。」 今回、前田さんのレポートについで、ここに書くつもりであったあと2人のレポートについては、号を改めて紹介したい。〔「行政職員からみた図書館とは」東近江市立図書館 山梶瑞穂」、「激動する時代を生きる図書館に期待する」北川憲司(滋賀地方自治研究センター)〕 教育・子どもぎょうせい

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