2018年11月13日火曜日

No.12「まちに図書館がある」とは、どういうことだろう。「図書館がある」とは、どういうことだろう。

「まちに図書館がある」とは、どういうことだろう、「図書館がある」とは、一体どういうことか。考えてみると私の中にいつもこの問いがある。その時、頭に浮かんでくるのは菅原峻さんの言葉だ。菅原さんについては、6月にブログを始めてから何度も言及し、これからもをあらためて書くことになるが、今回はその言葉を書き記しておこう。

〈図書館がある〉とは、
〈図書館の看板が下がった建物がまちにある〉ことではなく、
そのまちの隅々までサービスがゆきわたっていて、 
いつでも、誰でも、どんな資料でも利用できる、
その態勢がととのっていることをいう。            p.15


まちに図書館があるというのは、
どこに住んでいても、
住民がそこで役に立つサービスを手にすることができる、
納税者にふさわしい利益を得、あるいは還元を受けることができること
でなければならない。
図書館に必要な資料が揃い、自由に利用でき、
職員のサービスをしっかり得られなければ、
まちに図書館があることにはならない。             p.173


本は買って読むもの、日本人は借りるよりも自分のまわりに本を置きたがる、
そのような考えが何の根拠もないものであることは、
多くの図書館の実績が示している。
その実績を生むのが十分な図書費であり、
地域地域を覆うサービス網であり、
職員態勢であることも、
あらためていうまでもないことだ。               p.175


(図書館長は何をする人かについて)

図書館長は、そのまちの図書館サービスの最高責任者である。
図書館の大小、自治体の大小を問わない。
住民にどのような図書館サービスを届けるのか。
これから、サービスをどう発展させていくのか。
それを考え計画を立てる。
司書職員を指揮し、相談にのり、業務を滞りなくすすめていく、
それが図書館長である。

ふたたびデンマークの図書館法を引くと、その第二条で、
「図書館長は、他の司書職員の援けを得て資料を選択し、
 自治体に対してその責を負う」といっている。
住民が必要とする、役に立つ資料群の構成が、
図書館長の極めて大切な責務であることを言っているのだ。
そういったものを身につけていないで、どうして図書館長が務まるだろうか。  p.33

以上、『図書館の明日をひらく』( 菅原峻 晶文社 1999年)より。

菅原峻(たかし)さんのこと。

(1926年ー2011年6月24日 北海道生まれ。1953年、社団法人日本図書館協会に勤務。25年間、勤務して1978年3月図書館計画施設研究所を創設。日本各地の図書館づくりにかかわる。全国の図書館づくりの得がたい相談役として力をつくされた。持論は「図書館は住民次第」。研究所では北海動から沖縄県まで、全国の100館をこえる公立図書館の計画書を作成。又、図書館建築のコンサルタントも行った。公立図書館づくりの現場に日本でもっとも多く立会い、どんなに内容豊かな計画書ができても、その計画書通りの図書館を始めることが、日本においては、どんなに困難なことであるかを知りつくされた方でもある。)

1978年から始めた図書館計画施設研究所では、「北海道から沖縄県まで全国各地の図書館の基本計画をつくり(99館。25年間勤めた、前職の日本図書館協会では5館、合計100館をこえる。設計のコンサルタントも)図書館づくりの現場に日本でもっともたくさん立ち会った菅原峻さんは、日本の図書館は次の3つのタイプに分けられると発言しています。

(『図書館にはDNAが大事なのです』(『アミューズ』毎日新聞社2000.1.26、『図書館の明日を開く』晶文社1999)

最も多いのが、①.「図書館という看板が下がった役所」としか言えない図書館で、
全体の半分以上がそれに当たる。
②「無料の貸本屋」、残りの70~80%の図書館がそれに当たる。
③「本物の図書館」、全体の5%。しかも「本物の図書館」と思っていたところが、
いつのまにか、①、②化していくケースが珍しくない。それ程、「図書館はひよわ
な存在です」と。

市民である私たちは、3つの道のどれを選ぶかという問いかけです。

菅原さんがそこで述べている「本物の図書館」の要件である『図書館のDNA』とは、

「Dとはディレクター=館長。図書館とはまったくゆかりのないところから異動で来た、
本に何の興味もない館長か、それとも専門の教育を受けて本という海を公開する船=
図書館をしっかりと操舵している館長か。大きな違いですね」

【「図書館長」という名前で呼ばれる職員がいるかどうかではなく、「図書館長の仕事
 をする」図書館長がいるかどうか・・・と菅原さんの言葉を受け取ってきました。】

NはNEW BOOK=新しい本を指す。「新しく内容豊かな図書をきちんと購入し続けているか」

ATRACT=魅力。「中身の伴った資格を持ち、利用者の役に立つ魅力的な専門職員がいるかどうかです」

以上、『アミューズ』より。

各地でよりよい図書館づくり運動にとりくむ人たちをつなぎ、励まし、深い力で支え続けて来たのが、1981年8月15日に創刊され、2015年1月15日の100号まで、23年余りにわたり発行された『としょかん』(図書館計画施設研究所刊)で、「住民の住民による住民のための図書館」を考える私たち一人ひとりへの菅原さんからのこの上ない贈り物です。(当初は年4回の季刊、73号から年6回の隔月刊。2007年1月からは、`としょかん文庫・友の会`が101号から再刊。『としょかん 復刻版 NO.1~100』1,210頁 は図書館を考える時の宝の山です)



『図書館の明日をひらく』菅原峻 NO.31,06/4 /22 BIGLOBEメールマガジン
 「カプライト」より 菅原峻さんをしのぶ会 2012.1.23  この冊子づくりに感銘!
糸島市の図書館で所蔵しています。)もぜひ手にとってほしい資料です。

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